「令和3年度の酒造りに向けて」

令和3年度の酒造りが始まりました。
コロナ禍における2期目の仕込みです。今期はかなり減産した昨年よりは造りを増やしますが、それでも例年とは比較にならない少なさです。

この一年、いろいろなことを考えました。そして、今はコロナ前の世界に戻ることはないと確信しています。つまり、我々、酒造り業界も既成概念を振り払い、新しい時代に向けて急進しなくてはいけません。

スマホなどIT活用の熟成とともに、日本の食文化は変容しつつあります。個人が直接、作り手(メーカーや生産者)とつながって、より鮮度の良い、バイアスのない一次情報を豊富に手に入れることができます。

コロナ禍でスーパーの品ぞろえも変化しています。本来ならば高級料理店に並ぶような食材が増え、料理と合わせる酒のPRが盛んです。家庭料理の範疇を超え、各地方の郷土料理や世界各国の料理や食材にトライする人も増えたのではないでしょうか。料理人や料理研究家がYOUTUBEでレシピを披露し、オンラインで調理を学ぶ教室が盛況です。

外食や宴会そのものはもちろんなくなりませんが、今までよりも目的意識をもったものになっていくのでしょう。このような、より多様な食のスタイルとなった時代に受け入れられる酒造りが求められています。

季節や温冷、甘辛だけではなく、このようなシーンにはこのお酒をこのように、こんな料理にはこんなお酒はいかが?など食卓に華を添え、数多くの銘柄の中から、選んでいただける味の決め手やストーリーも大事です。

土台となる全製品の酒質向上はもちろんのこと、時代時代の感性をかぎ取った酒造りにまい進したいと思います。

今年も嘉泉の酒造りに一層のご期待をください。

杜氏 高橋