田村酒造場 かせん






酒蔵から、唄が消えて久しくなりました。

嘉泉では、今も「もと日待」と「甑倒し」という蔵の大事な儀式には、酒造り唄が酒蔵に響き渡ります。

4月に行われるのが甑倒し。それは松尾大明神に御神酒と供物を捧げ、酒造りに関わった者すべてが無事に酒造りが終わったことを感謝する大切な儀式です。蔵人たちは揃いの法被で式に臨みます。
当主の挨拶、杜氏の謝辞、乾杯。そしてこの後、嘉泉の酒蔵は酒造り唄に包まれるのです。
南部杜氏直伝のもと摺り唄。唄い手は、現製造部5人のメンバー、地元出身の若き蔵人たちです。
昔から音頭を取るのは、頭(かしら)の仕事。頭・塚本が女性らしい美しい声を響かせ、蔵人たちが慣れない節回しに四苦八苦しながら喉をふるわせます。
遠い昔から、南部杜氏たちの苦労も喜びも包み込んできた、一人では歌えない労働の唄。酒造りにかける意地と誇りと、切ない望郷の思いが込められた、哀調を帯びたその唄を・・。

嘉泉では、酒造り唄が途絶えたことはありません。それは遠い江戸の昔から連綿と、代々受け継がれている伝統です。
唄の種類や歌詞や、もちろん唄い手たちが変わろうと・・・。
ですから5人の若き蔵人たちはまさしく、創業以来180年に渡り培われてきた嘉泉の伝統に連なり、それを継ぐ者たちなのです。

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