言ノ葉

【蔵元】酒造り所感〜蔵元から

  • 言ノ葉
  • 2008.01.01

読者の皆様、明けましておめでとうございます。
田村酒造場 専務を務めます田村誠一郎でございます。平素は嘉泉のご愛顧並びに、メールマガジンのご購読をいただき誠にありがとうございます。
2008年元日発行の号ということで、簡単ではございますが蔵元より今年の酒造りに対する所感をお伝えしたいと思います。
まず1つめは、当蔵が究極の酒を目指して2004年秋に立ち上げたブランド「田むら」です。メールマガジンで何度かご紹介させていただいた「特別限定品 純米吟醸 田むら」は、おかげさまで、全国の目利きの酒屋さんに取り扱って頂き、製品納入に嬉しい悲鳴をあげる状況です。
当蔵が「造る」と決めた「味に幅があり、香り豊か。それでいて、全体像がぴしりと定まった奥行きのある酒」は大吟醸よりも手間がかかり 、杜氏にとっても大変なお酒です。そうして醸された「田むら」は、商品を吟味して愛情を持って大事に扱って下さる酒屋さんだけに販売していただきたいと思い、問屋を通さず直接取引で酒屋さんにお酒をお渡ししています。
そういう思いから、あえて 蔵でもお買い求めいただくことができませんので、お近くの取扱店で、ぜひ皆様と「田むら」が出会って頂くことを願います。
http://www.seishu-kasen.com/omot/omo_to.htm

また、我々はこれからも真摯に誠意ある酒屋さんと出会い、「田むらの心」を説明しなくてはいけません。そうして得た期待に応えられるよう、さらに上の酒造り、出荷体制の安定を今年度も目指したいと思います。
2つめは、今年は「お燗のためのお酒」の開発に、真剣に取り組みたいと思います。お燗酒というものは味もシチュエーションも、大変ふくよかなものです。
自分のために、大切な人のために、お気に入りのお酒を燗につけるひととき。
嘉泉は2008年、直球勝負で「お燗にして最上の酒」を目的とした新しい味の開発に挑みます。
真剣な取り組みですが、こういうものは、到達すべき味わいを想定して、あれこれ実験や試作品を重ねて造るものですから、そういった意味で色々杜氏と ''遊んで,,みようと思います。
「物事に取り掛かる時は、本質を汲み、例え過去に例がなくとも英断し、あせらず、求道する。」という、田村家由来の気質にならって、腰を据えて取り組みたいと思います。納得ができるものが誕生するまで1年かかるか2年かかるやもわかりませんが、手ごたえのあるお燗酒を提案させていただきますので、どうぞ楽しみにお待ちください。
最後に、このような酒造りに邁進するとともに、蔵元として「かつて暮らしの中にあった日本酒と共にある風景の復活」を願ってやみません。
自分の気に入った酒器と気に入った酒で一息つく夕べ。
暑気払いにキリリと冷やした冷酒を、小さなグラスでキュッとやる。
寒くなったから、そろそろお猪口は土物にしようかしら。
正月用のうるしの杯を出さなくちゃ。自分の好きな地酒を片手に祝いに駆けつける。おでんをフウフウ、喉にしみいる熱燗。結婚式の鏡割り、祭りや上棟の振舞酒。とてもここには書ききれません。
その風景の一つ一つは、豊かで、粋で、とても温かいものです。
一言で言えば「和」でしょうか。大和の国「日本」そのものの風景です。
そんな四季に和し、人に和す人生の楽しみ方、彩り方を昔の人はよく知っておられました。旨い地酒を「和穣良酒」、ただひたすらに造ることが、ひいては文化を豊かにすることであると我々は信じています。
今年も精進いたします。
田村誠一郎