言ノ葉

【蔵元】十六代目を襲名して

  • 言ノ葉
  • 2009.01.01

読者の皆様、明けましておめでとうございます。
並びに、メールマガジンのご購読をいただき誠にありがとうございます。
田村酒造場 田村誠一郎あらため田村半十郎でございます。
旧年十二月をもって私は十六代目 田村半十郎を襲名することとなりました。
不才の身ではございますが、今後は田村酒造場の社業発展はもとよりその伝統文化を習い、代々育んできた思想を受け継いで地域社会のつとめを果たしていきたいと思います。
旧年は色々なことが起こった年でした。
食の偽装問題、景気の悪化、物価の高騰、そして世界の巨大企業の経営悪化。
国内消費も落ち込む中、先祖代々繋いできた襲名をすることになりましたのも何かの定めのような気がいたし、身の引き締まる思いです。
しかしながら、このような状況は視点を変えてみれば、まっとうな商いや消費に立ち返るきっかけとなるようにも感じています。
こんな時こそ、皆様に喜んで頂けるよう、誠心誠意、丁寧に旨い酒を醸すことに努め、皆様の生活を豊かにしていきたいと思います。
さて、田村酒造場からニュースがございます。
まず1つめは、昨年の所感でも取り上げましたが、当蔵が究極の酒を目指して2004年秋に立ち上げたブランド「田むら」です。おかげさまで順調に拡販し東は青森県から西は山口県まで、問屋を通さず直接取引で特約店の酒屋さんにお渡ししています。しかしながら、「田むら」の名前が口コミなどを通して知れるにつれ、「近くの酒屋さんに置いてない」「遠くて買いに行けない」など全国の消費者の皆様からの声が当蔵に頻繁に届くようなりました。
熟慮した結果、1月下旬(予定)より弊社ホームページ経由でのみ、販売を行うことにいたしました。 
「田むら」に共感し、真摯に販売をして下さる酒屋さんを応援したい気持ちに変わりはありませんので、蔵で直接販売や電話、FAXなどの受付はいたしません。あくまでも近くに特約店がない場合にご利用頂ければと存じます。
「田むら」を置く酒屋さんは、とてもやる気があって様々な情報をご存じの方ばかりです。そういう酒屋さんとの付き合いは地酒を楽しむ上で非常に役立つものですから、足を伸ばせるのなら、そちらでお買い求め頂ければと存じます。
次に当蔵で初めてとなります「山廃」の出荷を行います。
こちらはホームページ販売はいたしませんので、お近くの酒屋さんに尋ねていただければと思います。
「山廃」とは簡単に言いますと、蒸し米をすり潰さず、麹の力だけで蒸し米を溶かす造りで、米と水と麹の様子をよく観察し、じっくりと腰を据えて仕込みます。その分発酵も長く続き、通常の酒とは比較にならない力強さを持ちます。
先人が行っていた古い造り方ですが、味わいに幅が出て、複雑で濃厚な旨味。
どっしりとした軸。
蔵元の個性を見るには一番の酒かもしれない怖い酒です。
それは、かねてより取り組んでいた「お燗のためのお酒」の誕生でもありました。
2年間蔵の中でじっくり寝かせ、うっすら黄色がかった熟成酒。
酸の強い、面白い酒ができました。ぬる燗で良し、あつ燗で良し。
日本酒と言えば、つまみと合わせる楽しみがありますがこの「山廃」に限っては、つまみはいらないかもしれません。
それくらい、相手をしてくれる酒です。
今はやりの"巣ごもり"にも、よく付き合ってくれますから、お気に入りの酒器を用意して、ぜひお試し下さいませ。
最後に、今思えば思い切った決断でしたが、先代が亡くなる前に当家の名を酒銘につけた「田むら」を見せることができたこと。
そして十六代目を襲名したばかりの現在「山廃」の出荷という田村酒造場でかつてない状況に身を置くこと。さまざまな思いが胸中を巡ります。
今年も精進いたします。
田村半十郎