言ノ葉

【蔵元】2015年 年頭所感

  • 言ノ葉
  • 2015.01.05

読者の皆様、明けましておめでとうございます。
平素は嘉泉のご愛顧ならびにメールマガジンのご購読をいただき
誠にありがとうございます。田村酒造場 田村半十郎でございます。

昨年は日本酒復活の手ごたえを感じる話題を多く目にいたしました。
日本酒は国内だけではなく、海外の注目も日々高まりを見せています。
一方、急速に伸びる輸出の影響により、昨年は酒米不足の問題も、一般のニュ
ースとして、繰り返し取り上げられました。

米は農作物ですから、その年によって不作豊作があります。
しかし、特定の品種がここまで不足したのは、もはや構造的な問題と言えるで
しょう。田村酒造場も、東京の酒蔵と言えど、従来の仕組みに頼りきっている
場合ではないと判断しました。そこで、昨夏より酒米の生産者を探し、
安定的に供給を受けるための取り組みを開始しました。

米どころではない東京の酒蔵は、好意的にとらえれば、地元産にとらわれず、
自分が目指す酒質に合った米を、日本全国から選ぶことができるわけです。
私は世界一の水準を誇る日本の物流システムと品質管理、そして携わる方々の
善意を信頼していますので、そこに問題はないと考えています。

さて、昨年はまず、大吟醸造りに必要な山田錦を本場、兵庫県の生産者から
直接購入いたしました。すると、等級を間違えたのではというほど、上質な米が
手に入り、驚くとともに、顔が見える取引の良さを実感することができたのです。

次に直接購入を検討したのは、当蔵の代表銘柄に成長した「田むら」の
酒米・吟ぎんがです。毎年、増産を重ねている酒ですから、酒米も一定量、
必要となります。こちらは、縁あって、岩手県遠野市宮守地区の生産者の皆様
に、生産していただけることになりました。もちろん全量取引です。

新しい取引を開始するにあたって、心配事を考えるときりがありません。
しかし、生産者の皆様と話し合いの上、分厚い契約書で事細かい内容を
定めるのではなく、「信義則の取引で行こう」となりました。
要するに、「困ったことが起こったら、互いに誠意をもって話し合いで、
解決しよう」と定めて終わりです。
今の時代には珍しい取引かもしれませんが、思えば当家は代々、地域のまとめ役
として似たような仕事をしていたからでしょうか。信義則の精神に頼る取引が
心にすっと、なじみました。

加工品を作っている以上、素材の確かさを明らかにするのは重要なことですが、
米については、人口が急速に増加した時代のシステムが出来上がっていて、
なかなか難しい現状にありました。
これで「田むら 吟ぎんが」については、「どこで、どのような人が育てた米を
使っている」と言えることになりました。

宮守地区の方も「地域で雇用が生まれる」「東京のお酒になる」と大変喜ばれ、
「一番良い田んぼを選ぶから任せてほしい」と嬉しい言葉を頂いています。
そのような高い意識から生まれた米で酒造りをする、こちらも責任重大です。
酒の良し悪しは、はっきりと味わいになって現れます。
毎年宮守地区のみなさんにも飲んでいただいて、お互いフィードバックを重ねな
がら、酒質向上に努めたいと思います。そのような酒造りの世界の広がりに、
私自身も高揚を隠せません。

米造りの話題は、ホームページでも引き続き、お届けしますので、ぜひ楽しみに
ご覧いただければと存じます。

本年も、どうぞご期待下さい。
                                    
                          田村半十郎